ストーリー
By:
  • Majed Mohammed | IOM Senior Audiovisual and Communications Assistant

2023年12月 イエメン・タイズ

 

タイズにある改修されたばかりのワディ・アラファ保健センターには、医療支援を求める人々が絶え間なく押し寄せています。1歳のアリは、母親のロキア(仮名)と一緒に、避難生活を送る上で命綱となる保健支援を受けるために辛抱強く待っています。

戦争で荒廃したイエメンで、ロキアが暮らすマクバナ地区の村まで戦禍が及んだとき、彼女の生活は立ち行かなくなりました。ロキアは未亡人で5人の子どもとともに故郷を離れ、安全な暮らしと、我が子のより良い未来を求め、全てをあとにして困難な旅に出たのです。

ロキアは語ります。

「私たちは、保護と住む場所を求めて、タイズのアッシュ・シャマヤティーン地区に来ました。当初は身を寄せる場所を見つけられませんでしたが、幸運なことに、人々が支援を申し出てくれました。それでも、子どもたちに食事と医薬品を与えるまでには、長い間苦労をしました。」

新しい環境に適応し、最低限必要な生活用品を揃えるだけでなく、48歳の彼女は、子どもたちが必要なケアを受けられるようになるまで苦労を重ねました。特に、肝臓に持病がある息子には24時間気を配らなければならず、ただでさえ困難な状況に、計り知れないストレスが加わりました。

ワディ・アラファ保健センターにおけるIOMの包括的な保健プログラムは、プライマリケアから専門的な治療まで、幅広い医療サービスを提供している Photo: IOM/Rami Ibrahim

長年の紛争はイエメンの保健インフラの崩壊と保健システムの混乱を招き、多くのコミュニティや家族が、ロキアのように適切な保健施設へのアクセスやサービスを受けられずにいます。

ロキアはこう話します。

「子どもたちが病気になっても、治療という選択肢がありませんでした。最寄りの保健センターは私たちの避難所からとても遠く、自宅で看病するしかありませんでした。」

 

ロキアの親子と同じように、アイシャ(仮名)もまた、重度の栄養失調を患う2歳の孫のアリが必要な定期的な医療支援を受けられるよう、苦労を重ねていました。

3年以上も避難生活を続けるアイシャは、祖母として、こう言います。

「私たちは紛争により家を追われました。避難している間ずっと、私たちは保健サービスを受けられず、生活はとても困難でした。」

国際移住機関(IOM)によるワディ・アラファ保健センターの改修までは、アリを含め家族の誰もが医療支援を受けるのが難しかったのです。

ロキアをはじめとする何千もの人々が、ワディ・アラファ保健センターで無料の医薬品にアクセスできるようになった Photo: IOM/Rami Ibrahim

イエメンには、450万人以上の国内避難民と、2,000万人以上のヘルスケアを必要とする人々が暮らしており、避難民コミュニティにとって、基本的な保健サービスへのアクセスには大きな障壁があります。その影響は、戦禍の最前線に近いマリブ地区や西海岸沿いで最も顕著ですが、人道支援はイエメン全土で緊急に必要とされています。

医師のレファト・ハサンIOMタイズ保健チームリーダーは説明します。

「ここで暮らす人々は、切実にヘルスケアを必要としています。多くの避難キャンプがある複数の紛争地域で、保健サービスが停止しているのです。」

避難当初に問題に直面したにも関わらず、ロキアとアイシャは我が子を守ろうとし、やがてIOMが支援するタイズの保健センターの再建されたことで、希望の光を見出しました。

IOMは、パートナーと共に、弱い立場に置かれた人々が必要なサービスを身近に利用できるよう、イエメン全土で包括的な保健プログラムを実施しています。このプログラムには、ワディ・アラファ保健センターのような施設の建設や改修、移動型診療所の運営、保健従事者向けのトレーニング、病気の蔓延を抑えるための予防医療の提供など、さまざまな活動が含まれています。

タイズのワディ・アラファ保健センターで支援を受けるまで、アリの家族は医療を受けるのが難しかった IOM/Rami Ibrahim

保健分野の支援を求める地域社会の声に応え、IOMはタイズにあるワディ・アラファ保健センターを改修し、家具や医薬品、設備を整えました。現在、この保健センターは基本的なヘルスケアサービスを提供するだけでなく、アッシュ・シャマヤティーン地区の住人のために献身的に働く医師や看護師のチームの拠点でもあります。

また、ジェンダーに基づく暴力のサバイバーには、心のケアを含む適切な保健サービスを提供し、他の専門的な支援にも安全にアクセスできるよう、IOMは保健従事者を訓練しています。

イエメン政府保健省や世界保健機関(WHO)との緊密な協力のもと、IOMは、国内避難民や移民、受入れコミュニティの住人に対し、命を救うプライマリケアや、二次予防や治療のヘルスケアサービスを提供しています。

IOMは、保健施設の改修や医療従事者への上乗せ賃金の支給、必要不可欠な医薬品や医療用品、機器の確実な供給、更には保健従事者向けのトレーニングや技術支援を通じて、イエメンの公衆衛生システムを強化するため保健省を支援しています。

ヘルスケアは普遍的人権であるという信念の下、ワディ・アラファ保健センターはタイズにおけるIOMの支援の中心となっている 写真:IOM/Rami Ibrahim

ワディ・アラファ保健センターは、開設直後からロキアの家族や幼いアリをはじめとする多くの人々のライフラインとなり、新たな健康問題に対しても迅速な支援を提供しています。保健センターは、タイズの3地区にある国内避難民のための5つの拠点で生活する15,000人以上の住民にサービスを提供し、地域の住民と避難民の双方に必要な支援を提供し、質の高い医療という差し迫った課題に対処しています。

保健センターは包括的な医療サービスを提供し、地域社会が求める多様な医療のニーズに対応しています。初期段階で求められるプライマリケアから、産科救急、臨床検査から予防医療、専門治療、啓発セッション、そして診断サービスにわたるまで、いつも活気に満ちています。

ロキアは教えてくれます。

「このセンターのおかげで、私たちの生活は劇的に改善されました。私たちは定期的に無料のヘルスケアと医薬品に手が届き、子どもたちの誰かが病気になった時にも、長距離移動をしたり、伝統的な治療法に頼ったりしなくて済みます。」

IOMによるタイズのワディ・アラファ保健センターの改修は、日本政府の資金提供により実施されました。